エンジンの電動化は、どこまで進んだのかを数字で確かめられるか
「電動化はどこまで来ているのか」。この問いはニュースの見出しでは毎日のように語られますが、いざ台数で確かめようとすると、対象によって難易度がまったく違います。乗用車は比較的追えます。しかし建設機械・農業機械・産業機械といったオフロードの機器では、公的な統計がほぼ存在しません。何で確かめられて、何が確かめられないのかを整理しました。
要点は次の通りです。
- 乗用車・商用車の電動化は、各国の登録・販売統計である程度追える
- オフロード機器(建機・農機・産業機械など)には登録制度自体がない国が多く、電動化率を示す公的統計が存在しない
- ニュースや発表は「製品が出たこと」しか教えてくれず、台数にはならない
- この空白を埋めるのが、動力源を問わず機器と搭載パワートレインを対で追う実測データベース
オンロードは追える――各国の登録・販売統計
乗用車やトラック・バスは、ナンバーを付けて公道を走るため、多くの国に登録や販売の統計があります。電動車の区分が設けられている国では、新車販売に占める電動車の比率、つまり電動化の進み具合を公的な数字で確認できます。国・地域単位ではありますが、オンロードの電動化はここから出発できます。
分からないこと:統計の区分(BEV・PHEV・HVの分け方)や集計方法は国ごとに異なり、世界を同じ基準で足し上げることはできません。ここは他の統計と同じ制約です。
オフロードは統計がない――電動化率の空白地帯
問題はオフロードです。建設機械・農業機械・産業機械・発電機などは、公道を走らないため登録制度がない国が多く、「その年に電動の建機が何台売れたか」を示す公的統計は、日本にも主要国にもほぼ存在しません。機械側の業界統計(機種別の生産・出荷台数)はあっても、動力源別の内訳までは公表されないのが普通です。
つまり「建機の電動化率」は、探しても見つからないのではなく、そもそも数えている公的統計がない数字です。電動ミニショベルの発表が相次いでいることと、市場全体で電動が何台になったかは、別の話です。
ニュース・メーカー発表で分かること、分からないこと
電動化の話題はニュースに事欠きません。新型の電動建機、電池交換式トラック、水素エンジンの実証――発表を追えば「何が出てきたか」は分かります。ただし発表は台数ではありません。実証機1台も量産1万台も、記事の上では同じ「登場」です。進み具合を測る物差しには使えません。
電動化の進み具合を確かめる方法
| 方法 | 分かること | 分からないこと |
|---|---|---|
| 各国の登録・販売統計(オンロード) | その国の電動車の販売・登録比率 | 国ごとに区分・基準が違い、世界を同じ物差しで見られない |
| 機械側の業界統計(オフロード) | 機種別の生産・出荷台数 | 動力源別の内訳。電動化率は出ない |
| ニュース・メーカー発表 | 新製品・実証の登場 | 台数。市場全体に占める比率 |
| 実測データベース | 機器と搭載パワートレインを対で追った台数。動力源別の構成と推移 | ―(対象範囲は要確認) |
※東販リサーチ作成(2026年9月時点)。
実測データベースは動力源ごと数えている
Power Systems Research のデータベースは、機器の分類を「何で動くか」ではなく「何をする機器か」で立てています。ディーゼルのミニショベルも電動のミニショベルも同じプロダクトに属し、そのうえで搭載するパワートレインの情報が記録されます。エンジン搭載機器の生産台数データベース(OE Link™)は電動・ハイブリッド駆動の機器も対象であり(出典:powersys.com OE Link™ページ)、エンジン側のデータベース(EnginLink™)も内燃機関に限らず電動のパワートレインを収録しています。
この構造だと、電動化は「同じ機器分類の中で、動力源別の構成が年々どう変わるか」として追えます。オフロードに公的統計がなくても、一台ずつの実測を積み上げているため、セグメント別・地域別に電動化の進み具合を台数で確認できる、ということです。収録は過去5年+当年+将来5年が標準なので、これまでの推移と今後の見通しを同じ物差しで見られます。本記事では個別の台数・比率には触れません。対象範囲を確認のうえ、サンプルデータでご確認ください。
東販リサーチの見解
電動化に関するデータのご相談は、当社がいまお受けする問い合わせの中で最も多い領域です。印象的なのは、ご質問が「電動化は来るのか」から「自社のセグメントでは、いつ・どの地域から来るのか」に変わってきたことです。前者はニュースで足りますが、後者は台数の推移でしか答えられません。セグメントと地域を絞って動力源別の構成を定点観測する。オフロードの電動化については、それが現時点で唯一の確かめ方だと考えています。
関連するデータベース
- EnginLink™ — エンジン生産実績・将来予測。電動パワートレインも収録
- OE Link™ — エンジン搭載機器の生産台数。電動・ハイブリッド駆動も対象
- 市場調査・市場分析(特命調査) — 電動化領域の個別調査のご相談
サンプルデータと製品概要(PDF)は無料でご請求いただけます。担当者より2営業日以内に返信いたします。