同じエンジンでも、仕向地によって求められる認証が違う

産業機械や建設機械に載る非道路(ノンロード)用エンジンには、自動車とは別体系の排出ガス規制があります。日本・EU・米国で名前も根拠法令も異なるため、海外展開や機種展開を検討する場面では、まず3つの規制の対応関係を整理する必要があります。要点は次の通りです。

  • 日本は「オフロード法」。2006年4月1日に施行され、対象は19kW以上560kW未満
  • EUは「EU Stage V」。根拠は Regulation (EU) 2016/1628 で、2019年1月1日から順次適用
  • 米国は「EPA Tier 4」。連邦規則集 40 CFR Part 1039 などが根拠
  • 規制区分は、エンジンデータベースでは認証・後処理装置などの項目として現れる

日本:オフロード法

正式名称は「特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律」で、通称オフロード法と呼ばれます。2006年4月1日に施行され、対象となるのは定格出力19kW以上560kW未満のエンジンを搭載した特定特殊自動車(公道を走行しない建設機械・農業機械など)です(出典:環境省の同法解説ページ/日本陸用内燃機関協会「日本の排出ガス法規制」)。

EU:Stage V

EUの非道路用エンジン規制は Stage V(ステージ5)です。根拠は Regulation (EU) 2016/1628(2016年9月16日公布、同年10月6日発効)で、上市(市場に出すこと)の期日は2019年1月1日、56kW以上130kW未満の出力帯のみ2020年1月1日と、出力帯によって適用時期が分かれています(出典:EUR-Lex, Regulation (EU) 2016/1628)。

米国:EPA Tier 4

米国はEPA(環境保護庁)が所管する Nonroad Diesel Tier 4 です。2004年6月29日に官報(Federal Register)に掲載された最終規則に基づき、連邦規則集の 40 CFR Part 1039 などに規定されています(出典:U.S. EPA, Control of Emissions of Air Pollution from Nonroad Diesel Engines and Fuel; Final Rule)。段階的に導入され、現行の最終段階が Tier 4 ファイナルと呼ばれます。

3地域の規制比較

地域根拠法令の正式名称所管対象・適用の骨子施行・上市の時期
日本特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律(オフロード法)環境省ほか定格出力19kW以上560kW未満の特定特殊自動車2006年4月1日施行
EURegulation (EU) 2016/1628(Stage V)欧州委員会非道路移動機械用エンジン。出力帯別に適用2016年10月6日発効。上市は2019年1月1日〜(56〜130kWは2020年1月1日〜)
米国40 CFR Part 1039 ほか(Nonroad Diesel Tier 4)EPA(環境保護庁)非道路用ディーゼルエンジン2004年6月29日官報掲載、段階導入

※東販リサーチ作成。出典:環境省・EUR-Lex・U.S. EPA の各公表資料(2026年9月時点)。

出力帯で見る適用時期(EU Stage V の区分を軸に)

出力帯(EU Stage V の区分)EU:上市期日日本:オフロード法の対象か米国
56kW未満2019年1月1日19kW以上は対象Tier 4 の対象(出力帯別に段階導入)
56kW以上130kW未満2020年1月1日対象同上
130kW以上2019年1月1日560kW未満まで対象同上

規制区分は、データのどの項目に現れるか

規制の対応関係を整理したら、次はそれをデータでどう扱うかです。Power Systems Research のエンジンデータベース(EnginLink™)とエンジン搭載機器のデータベース(OE Link™)は、エンジンごとの排出ガス認証と後処理装置の詳細を収録しています(出典:powersys.com)。具体的には、どの機関の認証か(Emission Certification Agency)、規制に対応するためにどんな技術を採っているか(Emission Solution Strategy)というフィールドがあり、認証レベル・後処理装置・対応技術の側からデータを切り出せます。

つまり「Stage V対応」「Tier 4対応」といった規制区分は、このデータベースの中では認証と技術の情報として現れます。規制の名前を知っていることと、その規制をクリアした機種をデータで特定できることの間には距離がありますが、この2つのフィールドがその距離を埋めます。

「対応済みが何台か」を知りたいときは

実際のご相談で多いのは、規制区分そのものを条件にした絞り込みというより、「どの規制をクリアした生産台数がどれだけあるか」「規制対応が今どこまで進んでいるか」という聞かれ方です。本記事では個別の台数には触れませんが、上記のフィールドを条件にすれば、地域・セグメント・出力帯ごとに規制対応の進捗を台数ベースで確認できます。規制の解説を読むことと、自社の市場でその規制対応がどこまで進んでいるかを数字で確かめることは、別の作業です。後者はデータの領域になります。

東販リサーチの見解

規制のご質問をいただくとき、お客様が本当に知りたいのは条文の中身ではなく、「この規制で市場がどう動くのか」「対応済みのエンジンはどれか」です。Power Systems Research のデータが規制レベルだけでなく、認証機関や対応技術(後処理装置など)まで収録しているのは、まさにこの問いに答えるためです。3地域の規制は名前も時期もばらばらですが、データの上では同じ物差し(認証と技術のフィールド)で扱えます。規制対応の進捗を定点観測する道具として、この2つのフィールドを覚えておいていただくと役に立つはずです。

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